牧野知弘著 祥伝社刊 「なぜ町の不動産屋はつぶれないのか」を読んで

リーマンショックの後、2011年に出版された本です。

日本では2005年から2008年にかけて「ミニバブル」の状況で、三大都市の地価は商業地で最大41%上昇しました。
2008年9月に「リーマンショック」と呼ばれる事件がアメリカで起こり、アメリカの不動産市況は大きなダメージを負い、日本のミニバブルも終わりました。
このとき日本国内でも多くの不動産会社が倒産しました。
しかし、倒産した会社の多くは「新興系不動産ファンド」といわれるもので、いわゆる町の不動産屋さんには影響はありませんでした。

不動産ファンドとは、ファンドの運用会社が投資家から集めた資金でビルを購入し、テナント料などから得られる運用益を投資家に配当するものです。
倒産した運用会社はファンドの運用益だけでは飽き足らなくなって、自らも自分のファンドに投資するようになった結果、金融機関が融資を引き揚げ始めた時に自分自身の資金が保てなくなったのでした。
これらの運用会社はそもそも自己資金が豊富でなく、融資によって投資用の資金を調達していた場合が多かったのです。

一方、町の不動産屋さんの主な収入源は物件売買の仲介、マンションやアパート、駐車場の管理や借家人の入れ替わりに伴って発生する手数料です。
また、契約の更新時には、手続きを代行して更新料の半分を受け取るのが一般的だそうです。
仲介の仕事は俗に「せんみつ」といわれ、1000件の案件を扱って成約率が3件といった厳しい世界ですが、一軒当たりで扱う金額が大きいので、年に4,5件も扱えれば暮らしてゆけるのだそうです。
普段は手数料収入等をコツコツ稼ぎながら売買物件をさがすという、じつに堅実な世界です。

この本では他に、不動産を売り買いするプロについても言及しており、地価のサイクルを上手に見極めれば莫大なカネを手にできるのが不動産というものだそうです。

しかし、著者の本当に言いたいことは、土地とは右から左へ動かして利ザヤをかせぐものではなく、利用して収益を生み出すことができるものであるということです。(「価値の「創出」ともいうべき側面」と著者は表現しています。)
土地は売らなくても高い利益が得られるのに、多くの人は土地を株式のように「売る」ことが最終目的と思ってしまうから、地価の上がり下がりに頭を悩ますのだと。
土地を売るものと考えずに、活用をしましょうというのです。
もしも、三井不動産や三菱地所が土地の活用を考えずに、土地の売買だけをしていたら、今の東京丸の内は存在しなかったでしょうとも言っています。

そして「サラリーマン大家さんのススメ」という章に進むのですが、土地の価値を維持していくのも、なかなか大変そう、と感じる記述も見受けられ、大家さんそんなに楽な商売でもなさそうです。
(ただ、経営がうまくいっているときの大家さんは本当にヒマらしく、一日に5回も犬の散歩に出ていた人の話も載っていました。)

あと、面白いと思った記述は、物件投資向きのキャラクターと物件運用向きのキャラクターは違うというところ。大きな違いがあるので、大手の不動産会社や、まっとうな不動産ファンドでは、物件取得のチームと物件運用のチームを明確に分けているそうです。
できればこの辺の話をもう少し知りたいと思いました。

タイトルの町の不動産屋さんについて、もう少し突っ込んだ話が知りたい気もしますが、一冊の中に不動産ファンド、売り立て業者や土地ころがし、アウトレットマンション・ビジネスからサラリーマン大家さんまでいろいろな内容が詰まっていて、読み物として楽しかったです。

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