著作権と所有権の違い|著作権の分かり難さは支分権のせい?

著作権の勉強を始めたころ、著作権の権利の性質がよく掴めなくて苦労しました。所有権との違いが分かるまでにも時間がかかりました。当時を思いおこしながら著作権と所有権について綴ってみました。

【そもそも何に対する、どのような権利なのか】

〈所有権〉
所有権は、民法の中の「物権」に分類されます。「物権」とは「人の物に対する権利」です。(これに対して「人の人に対する権利」が「債権」です。)

所有権とは人がある特定の物を全面的に物理的に支配する権利です。

民法206条(所有権の内容)
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

物とは、有体物のことです。

民法 第4章 物
(定義)
第85条
この法律において「物」とは、有体物をいう。

〈著作権〉
著作権の場合、権利の目的になるのは形のある物(有体物)ではありません。創作活動の結果として出来上がったコンテンツ(無体物)です。
では、コンテンツに対するどんな権利かというと、著作権法は、民法206条(所有権の内容)と違って、一言で表した条文がありません。
著作権法では、著作物の利用形態に応じて著作権の内容がいくつかの種類に分けて規定されています。
こんな感じです

第3款 著作権に含まれる権利の種類

第21条(複製権)
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

第22条(上演権及び演奏権)
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

この調子で第28条まで権利の種類が規定されています。これらを著作権の支分権といい、著作権は「権利の束」ともいわれます。

で、結局どんな権利かと言うと、著作物を出版、上演、放送等の方法により利用することに関する排他的、独占的な権利ということになります。
所有権と著作権の違いについて、弁護士の福井健策氏の例えが分かりやすかったので引用させてもらいます。

「紙の本それ自体とその中に入っている情報(コンテンツ)は別物です。紙の本を購入した場合、紙の本それ自体には購入者の所有権が働きますが、中に記されている情報には著作権があります。紙の本を自分で買ったとしても、中の情報をどんどんコピーすることは許されない。これが著作権というものの本質です。」(「なんでコンテンツにカネを払うのさ」岡田斗司夫氏との共著)

【権利の取得方法は?】

〈所有権〉
一般的なのは売買、贈与、相続など。あまりなさそうなのが時効による取得。(所有権の取得原因としてはむしろ例外に属するとされている。)
他に、遺失物の取得や、民法239条に規定されている、所有者のいない動産を所有の意思をもって占有することによる取得(川で魚を釣った場合など)などがあります。

〈著作権〉
著作権は著作物の創作と同時に自動的に発生します。登録などの手続きは要りません。

【権利の侵害に対して】

〈所有権〉
故意または過失で所有権が侵されたばあいの措置として、民法709条の不法行為による損害賠償があります。
しかし、所有者としては損害賠償を受け取るだけでなく、所有物を取り戻したい、原状回復して欲しいと思うでしょう。
そこで民法では所有権を根拠として次のような物権的請求権というものが認められています。
・返還請求権 (○○を返してほしい)
・妨害排除請求権(自分の土地に捨てられたゴミをどかしてほしい)
・妨害予防請求権(隣地の工事のせいで自分の土地が崩れそうだ。やめてほしい)

意外ですが、民法には物権的請求権を直接規定した条文はありません。しかしこの権利の存在は当然のことと解されているそうです。

〈著作権〉
著作権の侵害とは、著作者に無断で著作物を利用することをいいます。
著作権の侵害には、所有権のときと同じように民法の不法行為による損害賠償請求ができます。(相手に故意または過失がある場合のみ。)
他に
・差止請求(侵害行為をやめるように請求)
・予防請求(侵害行為をしないように請求)
・不当利得返還請求(侵害行為で不当に得た利益の返還を請求)
があります。

差止請求権と予防請求権は著作権法第112条に、不当利得返還請求権は民法第703条に規定されています。

【権利はどんな時消滅するのか】

〈所有権〉
目的物の滅失(家が消失してしまった等)、放棄(明文の規定はない)。
なお、所有権に消滅時効はありませんが、他人が取得時効で所有権を取得すれば、その反射的効果として所有権も消滅してしまいます。

〈著作権〉
著作者の死後50年で消滅します。更新したりはできません。

だらだらと書いてきましたが、言いたいのはこれです。
・著作権は支分権の束。これが著作権の分かりにくさの一因のような気がします。
・著作権で最も基本的な権利は複製権
・著作者は自由にコピーできるけど他人はダメよというのが著作権

注意
1.著作権は他人に譲渡できますが、このブログでは著作者=著作権者という想定で書いています。
2.広義の「著作権」では著作権は「著作者人格権」と財産権としての「著作権」の2種類があります。著作権法では財産権としての権利だけを意味して「著作権」という用語を使っています。この記事もそれに従っています。

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